私はスタンダードプリコーションに準じた院内感染対策をしたい!
ある歯学生は思いました。スクリーニングってどういうこと?
見た目に綺麗な診療室と安全安心な診療室の違いが分かりますか?
これは私が学生時代の話です。
40代半ばの一人の女性の患者さんが来ました。
”歯が痛いのを診てほしい・・・”
まず問診票を記入してもらいます。住所、年齢、気になるところ・・・。その中に、人にうつる病気にかかっていますか?という項目が病院の問診票には書いてありました。病院内でうつっても困りますし、患者さん同士でうつっても大変ですから、問診票の質問は当たり前です。
”いいえ”
にチェックがついていました。
当時の先生は”感染症はないからいつもの外来で診療できるな”と私に言いました。
その当時は問診票こそがスクリーニングの有効な方法の一つであると考えられていたのです。当時の一番偉い教授もそう言っていました。んん?待てよ?風邪だって、いつかかったのかわからないよなぁ?何時何分何秒に感染したのだろうか?うつる病気を全部調べてから診療っていなきゃけならないのか?
よーく考えたら、病気にいつかかったかなんて、患者さんが来院するたびにすべての病気の検査をしないと確認しようがありません。
その通りなんです。
感染対策としてのこの問診表の質問の答えを鵜呑みにすることは、現在ではまったくといっていいほど通用しません。
ではどうすることが一番いいのか?
現在はスタンダードプリコーションといって、全員が感染しているかもしれない立場に立って院内感染を防ぎましょうと言うシステムが最善とされています。さて、院内感染と聞くとなにやら怪しい感じがしますが、いかがでしょうか?
まず簡単に院内感染について説明します。
院内感染とは、患者さん同士あるいは患者さんと医院従業員との間で何らかの感染が起こったことを言い、その原因が明らか(医学的に検査をした結果)であったときのことです。感染経路としては空気感染と接触感染が主なものです。
歯科医院での院内感染で一番注意が必要なものは、医療従事者が他の誰かに接触感染をさせた場合です。
接触感染の例を示します。
1.ある患者さんの口の中に細菌がいて、それを歯科医師あるいは歯科衛生士がさわる。
2.歯科医師あるいは衛生士の手もしくは器具に細菌がつく。
3.手洗いもしくは器具の殺菌・消毒に不備があった。
4.その歯科医師あるいは衛生士が、ちがう患者さんをさわった。
5.ちがう患者さんに細菌がついた。
6.ちがう患者さんが感染症を発病した。
こうなると院内感染になります。
問題点としては、歯科医師あるいは衛生士の手洗いが不十分のまま、もしくは器具の滅菌・消毒が不十分の状態で他の患者さんを触ったことです。1や2は毎回の診療行為の中で避けることができません。ですから、グローブ・マスクなどで我々が患者さんから感染することを防いでいます。またこれらは、我々の手指や口からの感染を防ぐためでもあります。3および4での対応が不十分であると5へ移行するわけです。5から6には必ず進むわけではありませんが、5の頻度が多いほど6、つまり院内感染になる可能性が高まると言うことです。口の中は元々細菌だらけですので、無菌状態での操作は不可能です。ですから、2→3→4 このあたりの→をブロックすることが重要です。
ですから、当院では、スタンダードプリコーションに基づいて策定された歯科診療ガイドラインに準じた院内感染予防対策をとっています。ガイドラインでは、しっかりとした研究結果を基に感染予防に有効な手段を記してあります。このしっかりとした研究結果こそがエビデンス=証拠なのです。
さて、それではスタンダードプリコーションとはいかなるものでしょうか?
”すべての患者は未同定であり、感染の可能性があるものとして取り扱う”とする考え方です。これは米国疾病管理予防センターが1996年に提唱されたものです。要するに、すべての人が誰かに細菌感染させる可能性があると考えて対策をしましょうということです。
当院ではこのスタンダードプリコーションを徹底して取り入れています。しかも母校のセンターと同程度、あるいはそれより徹底している部分もあります(私が在職していた当時との比較です)。
当院では、診療の際
1.可能な限りディスポ製品(筆、鉛筆、シリンジの先端など)を使っています。
2.グローブ使用の上、手で触れる部分はビニールラップなどで覆い、毎回の交換を行っています。
3.歯型も消毒しています。
4.器具や器材はできるかぎり高圧蒸気滅菌、できないものはガス滅菌という方法をとっています。高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)はまさに器具についた細菌やウイルスを滅菌するため器械です。電化製品にもクラス分けされているように、この器械もクラスによってその性能が大きく異なります。ヨーロッパでは厳密にクラス分けがなされており、当院ではEN13060”クラスS”を用いております。これは外表のみならず中腔物(筒のようなもの)の中まで滅菌可能な器械となっています。
などなど、徹底した感染対策をお約束しています。
こういった知識は病院選びにも役立ちますよ。お掃除が行き届き、綺麗な診療室なのは当たり前。診療に関わる裏側の部分でも、安心安全を皆さまにお約束している歯科クリニックを選びましょう(^_-)-☆
もっと詳しく知りたい方は初回カウンセリングの時に、遠慮をせず、直接おたずね下さい(^o^)